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こどもイキイキ

NPO法人インフィーニティー主宰、
野口先生からのメッセージを掲載していきます。
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≪Vol、3≫ 「心の成長生理学③」

2010年7月30日

 最近の胎児医学・新生児医学(赤ちゃん学)の進歩によって、胎児は多彩な行動と取ることが明らかになってきました。要するに歩いたり、食べたり、笑ったりと生まれて自然にできるプログラムはお母さんのお腹の中にいるときにプログラミングされているということです。胎児期や出生直後に見られる行動は、育児や教育の影響を受けていないので、遺伝子によって決まる、基本的なプログラムによる行動です。

  例えば『歩行』。胎児はお母さんのお腹の中にいるときから、手外足を動かしたりします。
少なくともそれは大人のような意図的な運動でなく、反射的、自動的なものです。これは出生直後まで続きます。新生児を支えて足を堅い所に当てると、反射的に足を動かす「ステッピング反射」もそうです。この行動は、歩行に似ているので「原始歩行」とも呼ばれています。これは歩くためのプログラムです。この「ステッピング反射」は脳障害がある乳児では中々消えませんが、生後1カ月ほどで消失します。いくら刺激しても、そのプログラムが作動しないのです。なぜかというと、よく目は見えていないし、体重を支える筋力も発達していないため、恐ろしくて歩行のプログラムのスイッチが抑えられるからです。ということは、危険を察し、制御する心のプログラムも新生児の脳の中にあるということです。やがて生後1年を過ぎるころになれば、脳は急速に発達し、子どもは自分の意思で、歩行のプログラムを働かせヨチヨチと歩き始めるのです。

  歩行のプログラムだけではありません。子宮内の胎児が指を吸います。これは母乳やミルクを吸うプログラムの準備をしているのかもしれません。妊娠10数週の胎児になると、母親がテレビを観ているとき、テレビの音楽が変わると、胎児の心拍動も変わります。既に、リズムの違いを感じるプグラムが準備できていることになります。また、超音波などで胎児が微笑むことや、お母さんの感情に反応していることもわかってきています。
ただ、これらのプログラムは生後呼び覚まさないと繋がらないのです。生後すぐにオオカミに育てられた少女、アマラ、カマラは発見され、牧師さんの経営する施設で育てることになりましたが、2歳のアマラは間もなく死亡し、8歳の姉のカマラは17歳のとき尿毒素で亡くなります。彼女は2本足で歩かず、両手両足で這い、死ぬ時までに覚えた言葉の数は45語だったそうです。

 また、1981年にノーベル賞を受賞したヒューベルとヴィーゼルという脳生理学者は「発達途中の脳の感覚遮断実験」の研究において、生まれたての子猫の片目を3週間塞いでおくと、その片方の目は盲目になることを発見しました。私たちがものを両目で見ることができるのは、生まれたときに両目で見ることを許されたからです。

 せっかくプログラミングされたものを呼び覚まさないのはもったいないことですね。